Spare Times

暇な時に書きます

28歳になってしまった

 28歳を都内でむかえた。苗場ではない、都内である(ここは来年のために強調しておく)。28歳になってしまった。お祝い頂いた皆々様、本当にありがとうございます。今年はいい子になります。

 

 18歳の夏、部活をサボって校舎の4階にある教室からグラウンドを眺めていた。向かって左側には野球部とサッカー部、真ん中には陸上部、その周りにソフトボールラグビー部があり、右側には自分の所属していた硬式テニス部と軟式テニス部があった(あとバスケ部が外で使う空き地があった)。みんなが真剣に取り組んでいるなか、なぜだか自分だけがその輪の中に入れない。理由はわからない、怪我も治っていたはずなのに。

 

 ひとり教室でぽつんと座っていると、時折クラスメイトや他のクラスの人たちが入ってきて、一緒に校庭を眺めたり、とりとめのない話をしていたのだけど、今考えるとこれは青春だな。

 

    For Tracy Hydeのアルバム『Film Bleu』を思い出す。あと、前に書いてもらったコラムで、Helsinki Lambda Clubの橋本くんが「青春は曖昧だ。何となく始まって何となく終わる」と言っていたんだけど、まさにそうで、たぶん何となく始まって何となく終わったのはその時期だった。


For Tracy Hyde 1st Album "Film Bleu" Trailer

 


Helsinki Lambda Club − しゃれこうべ しゃれこうべ (official video)

 

 入れ替わり立ち替わり人が教室に入ってきて、しばらく話すと出ていくみたいなことになっていたから、展示会で在廊している出展者が来場客と話すようにひとりひとりと言葉を交わしていく。

 

 廊下に目を向けると、おそらく高校で4番目くらいに可愛かった女の子が歩いている。でもビビってしまい、話しかけることができなかった。彼女は今、Twitterのフォロワー約10万人、Instagramのフォロワー約14万人を従える人気グラビアアイドルになってしまったから非常に惜しいことをした。本当に惜しい。ちゃんと仲良くなれば良かった。マジで惜しい、どうしよう。

 

 

 

 一息ついたところで、美術の課題をついでにやっておこうと大判の画用紙を取り出し、グラウンドの風景を白紙の上に鉛筆で描写する。窓から入る風が心地良い。波打つようにさざめくカーテンから、静かに、ランダムに生成される音をずっと聴いていたい。

 

 そうすると結局、日が暮れてから家路につくようになる。帰宅すれば受験勉強のためにデッサンをしたり、犬と戯れたり、好きな子からメールが来ないかな〜とソニーエリクソンのケータイで10分おきにセンター問い合わせをしていた。その子の着信音はBUMP OF CHICKENの「ギルド」だったんだけど、ついぞ、“愛されたくて吠えて”というサビを聴くことはなかった。先日、風の噂で母親になったことを聞いた。

 

 あれから10年が経ったから当然、環境も変わる。夢見ていた職業についているわけではないし、飼っていたペットは死んでしまった。当時の友だちのほとんどとは疎遠になった。カープが優勝した。

カープが優勝したら宿題は無しにする - Spare Times

 

 時間の経過で一番残酷なことは、老化とか加齢臭とか会社で左遷されてしまうとか不祥事でクビになるとかそういうことではなくて、何かを“喪失”してしまうこと。機会、友人、家族、動物、ほかにも数えきれないものを失っていく。

 

 個人的には去年『こち亀』の連載が終わったことで、本当に寝込んでしまいしばらく家から出ることができなかった。友だちが亡くなった時よりも動揺していた。

 

   自身のアイデンティティ形成に『こち亀』が果たした役割は大きい。と感じることができたのは失ってしまったからで、喪失にも必ず意味があると信じている。

 

 

 あれっ、27歳になった時のブログより前向きなことばかり書いている。たぶん、この1年間がとても楽しかったからなんだろうな。

 

 インターネットでクソリプを飛ばしてくるアカウントは別にして、あらゆるところで出会ったあらゆる人がみんな面白かった。

 

    道ですれ違って突然殴りかかってくるおじさん、丸ノ内線に乗っていると四谷三丁目あたりで「お前なに?なんか言いたいことあるの?」と絡んできたので「は?殺すぞ」と言って少しトラブルになってしまったサーフブランド・PIKOを着こなすお兄さん(PIKO太郎)、自己中心的な大人、データに基づいた分析ができない大人、そういう人たちですら、エンタメだと思えた。

 

 なので歳を取ったという若干の寂しさはありつつも、前向きに30代へ向かって歩いていけると強く思いました。27歳と28歳、意外と簡単に、線としてつながった。絡まらないよう気を付けたい。

 

 

karasumaoike1989.hatenablog.com

 

参考文献:辛酸なめ子,『大人のコミュニケーション術』(光文社新書